ヘタレ男たらけのスターウォーズ(フォースの覚醒)【スターウォーズ祭り開催中】
盛大にネタバレしているので、隠しますね。本文は「続きを読む」から。ネタバレなしのエントリーは以下を見て頂ければ嬉しいです。
「フォース」の覚醒は、「ヘタレ男」がやたらと多い。逆に女性はなんだか凛としている。どうしてだろうか。
へたれはもともと芸人の楽屋言葉で一人前ではない芸人を意味し、そういった芸人を嘲う言葉として使われていた。(中略)意味も「腰抜け」「根性なし」と広がりを見せ、表記もカタカナのヘタレが使われるようになる。(日本語俗語辞書)
◆ヘタレ男一覧
◇フィン
ヘタレというのには可愛そうな境遇だが、映画の登場人物としてはヘタレには違いない。マスクにべっとりとついた血は、彼の恐怖の象徴である。戦いから逃げ、ファーストオーダーをこれ以上なく恐れている。序盤は逃げようとしてばかりである。
事情は分からないが、こちらも戦いから逃げ出している。妻であるレイアは将軍としてレジスタンスを率いているのに、ハン・ソロは戦争から逃げ、今は借金取りから逃げ出す生活である。そのくせ「喧嘩しても、見送るときは寂しかった」と言うレイア将軍に、「それが狙いさ」なんて嘯いて見せる、やけにダンディーな男である。
◇カイロ・レン
レーザービームをフォースで止めたときは、シリーズ最強の戦闘力か もしれないと思ったが、後になればなるほどヘタレ度が高まっていく。臆病な主人公が少しずつ勇敢になっていくのが多くのパターンだが、彼はその逆を堂々と 突っ走っている。マスクを取ったときの雰囲気がハリーポッターのスネイプ先生に似ている。駄々っ子のようにライトセーバーを振り回し、ダークサイドに堕ちた息子を救おうとした 父を殺した。
◇ルーク
銀河の危機を放置して、姿をくらませている。海を眺めている場合ではないし、意味ありげな表情を浮かべている場合ではない。彼は本来の能力からすれば、Xウィングに乗ってスターキラーを爆破するのに最適の人物のはずである。それを戦争の素人である女性と、ともに軍隊を逃げ出した老年と青年、そして彼の愛犬に任せてしまっている(愛犬は超優秀だが)。
◆全てのヘタレ男を変えていく女性主人公レイ
上記の全てのヘタレ男を覚醒させていくのが、レイである。レイは魅力的だった。顔つきからして凛としているし、実際に勇敢で恐れない。しかし砂漠で孤独に家族を待ち続ける姿は健気で、寂しげである。そんなレイが、BB8に遭遇することで、戦いに巻き込まれることになる。彼女と出会う男たちはヘタレ男ばかりであるが、彼女は全くヘタレではない。むしろ彼女の勇敢さがヘタレ男たちに“覚醒”を促していくのである。
◆ヘタレ男たちの覚醒
おそらく今後のストーリーは、レイと遭遇した男たちの「ヘタレ脱却」がテーマになるだろう。そのために、今回の「ヘタレ脱却」を確認しておこう。
◇フィン
すでにポー・ダメロンとレイによって「ヘタレ脱却」第一段階終了。ファーストオーダーを恐れ、戦いを恐れていた彼だが、マスクを捨てた後は戦闘力が上がっており、ラストでは達人カイロ・レンを相手に、セーバー剣道勝負で一矢を報いる。これは快挙である。というか、カイロ・レンがこの時点ではすでに「ヘタレ」過ぎるのかもしれない。
こちらもレイアとレイによって、「ヘタレ脱却」最終段階終了。最終段階になってしまったのが、ファンとしては悲しいところである。カイロ・レン相手に言葉で説得しようとしたところに、見通しの甘さを指摘する向きもあるでしょうが、そこは許してあげてください。親っていうのはそういうものかもしれないのです。僕も「馬鹿だ、そんなことで説得できるはずがない」と思いましたよ。
◇カイロ・レン
レイの勇敢さを前に、むしろ根っからの「ヘタレ」を露呈させてしまったカイロ・レンは、おそらく次回で「ヘタレ脱却」を果たすキャラクターの一人だろう。ちょうどそれは、エピソード3の最後で、アナキンがダークサイドに堕ちることによって、「ヘタレ」を解消したような手順を踏むことになるのではないか。つまり、大切なものを失うという形で。
◇ルーク
おそらく次回作(エピソード8)は、彼の「ヘタレ脱却」が描かれることになるだろう。もう大分年を取った彼 が再び戦いの場に出向くのか、あるいはレイの導き手となるのかはわからない。しかし確実なことは、彼がなぜ「ヘタレ男」になってしまったのかが次回作で明 らかになり、彼は何らかの手順で以てそれを乗り越えるだろう、ということだ。その際にレイとの関係が基軸になるのは間違いない。
◆女性にとっては面白いのか。
こんな記事もある。
SF、アクション…「スター・ウォーズ」と言えば男性向けの作品だという印象が強いかもしれない。しかし、最新作はJ.J.エイブラムス監督が「女性をストーリーの中心に置いた理由は、女性も楽しめる映画にしたかったから」と語っているように、“女性向け”を意識して制作されている。
しかし、「ヘタレ男」を強い女性キャラクターが覚醒させていく映画というのは、実際女性にはどう見えるのだろう。本作は基本的にレイ視点なので、その辺りが余計に気になる。男性としては、こういう「ヘタレ男」は親近感がわく。なぜなら、他ならぬ自分自身がそういう「ヘタレ男」だからである。レイ視点をあえて離れて考えてみると、そういう男性はレイのことを「素敵なお姉さん」的な位置づけで観ることになるだろう。そういう意味では、性別を議論の俎上に載せるのなら、やはり今回も男性向けであるような気がする。