僕は映画狂、というより、映画を語りたい今日

もしかすると、映画そのものよりも映画館の暗闇のほうが好きかもしれない。

映画『ダイバージェント』 体育会女子が初恋のついでに世界を救う

◆体育会系女子の恋を邪魔するための心得

1.ガリ勉になれ。

  体育会系女子の敵は、恋を知らぬガリ勉である。

2.手段は暴力一択。

  間違っても勉学で挑んではならない。勉学では相手にもされないだろう。

3.愛に勝てるものはない。

  愛が最強!そう、愛の力が最強である!

 

 

◆体育会系女子の初恋物語

 最近の名探偵コナンにミステリー要素を求めるのは間違っている。コナンは007のようにメカを駆使したアクションと、全く進展しない“純愛物語”を楽しむ映画である。

 同様に本作「ダイバージェント」にSF的な一貫性を求めるのは間違っている。人類は、最終戦争の教訓を生かし、人類すべてを5つの派閥に分けて、社会を運営している。5つの派閥とは、「無欲」「勇敢」「博学」その他2つ。「無欲」が政治を司り、「勇敢」が治安を守る。「博学」がその構図を覆すべくクーデターを起こす。

 5つの派閥に分かれて社会を運営することで、どのように平和が保たれるのかは、よく分からない。だが、理由がよく分からないのは、それだけではない。むしろ、この映画は脈絡なく物語が進展するところに、大きな特徴がある。

 例えば、主人公トリスは、「異端者(ダイバージェント)」と認定されるのだが、どうやら「異端者」は社会の脅威であるとされているらしく、発覚すれば死を免れないらしい。どうしてだろうか(色々な能力があって、便利だと思うけどなー)。第二に、主人公トリスは、自分が「異端者」であることを隠して生きなければならないので、一つの派閥に志願しようとするのだが、それが自分の出自である「無欲」ではなく、「勇敢」なのだ。父親が「無欲」で議員をしているという絶好の環境ながら、何のツテもない「勇敢」へと志願するのはどうしてだろうか。それは、生き残るために不利ではないのか。

 これらの脈絡のなさは、最後まで払拭されないが、映画中盤からはそのような一貫性を求めていた自分の方が間違っていたことに気付く。主人公トリスは、体育会系のノリの「勇敢」にあって、ただ一人爽やかイケメン・オーラを発散する教官フォーに出会うのだ。このイケメン・オーラはあまりにも圧倒的であったので、僕は自分の間違いにすぐに気づくことができた。その圧倒の具合がよく分かる一例をあげておく。教官フォーと、もう一人の教官の対比である。

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 上のがフォーで主人公の味方、下の悪い顔はエリックで敵方。なるほど、この映画のテーマはこれである! 体育会系女子の初恋物語として、全体を眺めてみると、事件は決して脈絡なく起こっているのではない。事件は一貫して、トリスとフォーの恋路を燃えあがらせるために、起こっている。

「事件は社会で起こってるんじゃない! 恋路で起こっているのだ!」

 嗚呼、トリスとフォーの恋に幸あれ。

 

 

◆それにしても悪すぎる「博学」

 トリスとフォーの恋路を阻むべく大活躍するのは、もちろん「博学」だ。別名「がり勉くん軍団」と言ってもよいのだろう。体育会系女子の恋路を阻むのは、いつの世も、恋を知らぬ勉強馬鹿ばかりである、ということなのだろう。

 それにしても、「博学」はその名に反して、本物の馬鹿の集合体である。面白がって狂気に身を任せているとしか思えない。彼らは「無欲」が派閥システムを破壊しようとしていると考えて、それを防ぐべく、自ら派閥システムを破壊する。あるいは、平和を守ろうと考えて、「無欲」を皆殺しにしようとする。そのために「勇敢」の軍事力が必要だと考えて、「勇敢」を化学物質で操ろうとする。とにかくひたすら悪いのである。そのくせ「自分の信念のためなら、死ねる!」などと言って、大真面目である。ある意味で、悪の最終形態ともいえるのも知れない。悪のために悪を行う連中ほど怖いものはない。

 そんな悪を打ち破るのは何か。そんなものは決まっている。愛、である。フォーは化学物質で操られて指令室で拘束されている。ここで、「どうしてフォーを殺さなかったのか」「フォーだけ指令室で管理しているメリットは?」という疑問は、お角違いというものだ。繰り返そう。この映画において、全ての要素はトリスとフォーの恋路を燃え上がらせるための仕掛けに過ぎない。トリスは、化学物質で操られたフォーを、愛の力で取り戻す。なるほど、自分に銃口を向けさせながらフォーを説得したのは、本来「勇敢」に留まらず「異端者」であったトリスらしい解決の仕方であった。

 

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