僕は映画狂、というより、映画を語りたい今日

もしかすると、映画そのものよりも映画館の暗闇のほうが好きかもしれない。

スターウォーズはなぜ面白いか。最終回答(後編)~フォースと共にあらんことを!~【スターウォーズ祭り開催中】

 作日のエントリー(前編)のまとめ。

 スターウォーズの魅力を表すために、この一言で十分なのかもしれない。

「なんて広い映画なんだろう!?」

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 実は別方面からほとんど同じことを主張してくれている本がある。人類学専攻の研究者でありながら漫画家という稀有な経歴を持つ筆者の主張は以下の通りである(ちなみに、この本はめちゃくちゃ面白かった。「ワンピース」や「進撃の巨人」がなぜ面白いのか、知りたい方は是非本書を!)

 本書の主張の核は、「人間ではなく、世界」つまり「ドラマ性ではなく、世界観」ということにある。従来のエンタメが「ドラマ性」で魅せてきたところを、本書で取り上げられているエンタメは「世界観」で魅せているのだ。スターウォーズにとって、その世界観とは、つまり「宇宙空間」のことである。

ルーカスの構想する「宇宙空間」は、このタトゥイーンを大幅に拡張したものである。それはサイエンスによって観測される現実の宇宙空間ではなく、文化人類学が対象とする異文化とも相通ずる「エキゾチック宇宙空間」なのである。そこでは、文化人類学民俗学によって観察される現実の地球上の人類社会が加工されて、宇宙空間のスケール感の中にちりばめられている。

 タトゥイーンから離れて、一般化して考えるとスター・ウォーズ』空間は、ルーカスの想像力によって宇宙のスケールに拡散され巨大化した地球そのものでもある。

  筆者にとって、スターウォーズの魅力は「ルーカスの想像力によって宇宙のスケールに拡散され巨大化した地球そのもの」である。ルーカスは宇宙を描くために、地球というメタファーを使ったのだ。地球は広大な宇宙へと拡大される。入り乱れる異文化間の強烈なギャップが、あるいは銀河の中心地とタトゥイーンのような僻地との壮大すぎるギャップが、そのまま遠近法によって読み替えられて、宇宙のスケール感に変わっていく。筆者にとって、スターウォーズの主人公は宇宙そのものであり、宇宙の「ひな形」であるタトゥイーンという空間である。

 さて、スターウォーズはなぜ面白いか」を探求する最後の段階として、この筆者の主張に対して補足する形で、僕なりの回答を提示しておきたい。

 筆者の主張の核には、「人よりも、世界」という前提がある。筆者は、スターウォーズについても「ドラマもそこそこ練られているが、まあ、大した話でもない」と書いている通り、「物語」よりもやはり「世界観」に成功のカギがあると考えている。

 ただ僕は結局のところ、二者択一ではなく、両者の力関係に過ぎないのではないかと思う。つまり「『物語』か『世界観』か?」なのではなく、「『物語』が『世界観』に奉仕した」結果、スターウォーズの魅力が「世界観」だと感じられるようになるのではないか。

 では、「物語」はどのようなギミックを以て、「世界観」に奉仕したのか。僕は、その奉仕の仕方が、「フォース」だったのだと思う。あの分厚い本「スター・ウォーズはいかにして宇宙を征服したのか」(下記リンク)によると、フォースは次のように定義されている。

 フォースはジェダイの力の根源だ。生命体が作り出すエネルギーの場で、それは我々を取り囲み、我々の中に充満する。それは銀河全体を結びつけるものだ。

 フォースはジェダイ同士を結びつける。あるいは、ジェダイと宇宙を結びつける。あるいは、もう少し一般化して、登場人物と世界を結びつける。この設定は、どのような形で生きているのだろうか。単ある設定に過ぎないのだろうか。

 昨日のエントリーの表現を蒸し返せば、スターウォーズにとって、宇宙とはこのような空間である、と僕は考えている。

 宇宙とは、立ち現れるということが、立ち現れているものをすべて、しかも立ち現れているものとして、そこへと蔵し返す所のことである。

…とするならば、「そこへと蔵し返す」力が、物語上のギミックとして、「フォース」と名付けられているのではないか。上記の引用で確認した通り、フォースは登場人物と宇宙を繋げる。いや、もっと正確に言うと、宇宙と登場人物は対等ではない。宇宙のほうが上である。フォースは宇宙から登場人物へと流れる水流である。

 当たり前だが、僕は主張しているのは「フォース」の現実的な価値ではない。「フォース」は、ひとつの映画の単なる設定に過ぎない(しかも今となっては平凡な設定)。しかし、この設定は、スターウォーズの魅力を生み出す根本の仕組みである。

 このように問うべきである。スターウォーズの最大の魅力は「宇宙」だと言ったところで、実際のところ、我々は「宇宙」にどのようにたどり着けるのか。入り口はどこで、通路は何なのか。

 「スターウォーズはなぜ面白いか」は上記のような問いへと等置されるべきだったのだ。「宇宙」への入り口はどこで、通路は何なのか――嬉々として答えよう! 入り口の名前は、ルークであり、デススターである。ダースベイダーであり、Xウィングである。では、通路の名前は? そう、それこそがが「フォース」という物語上のギミックではなかったか。登場人物がフォースによって導かれるとき、僕たちは導かれているものの存在を知る。その全体性を感じる。「フォース」によって、あの広大に広がる宇宙へとたどり着き、その広大さに身震いする。巨大な宇宙の実在感に包み込まれ、なるほど「ここ」こそが宇宙だったのだ、と知ることになる。「フォース」こそが、スターウォーズスターウォーズ足り得る秘密だったのではないか。

最終結論。

スターウォーズの魅力は、「フォース」の力によって成立している!

スターウォーズよ、いつまでもフォースと共にあらんことを!

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 次回は、「フォースの覚醒」の感想です。

スター・ウォーズはいかにして宇宙を征服したのか

スター・ウォーズはいかにして宇宙を征服したのか