僕は映画狂、というより、映画を語りたい今日

もしかすると、映画そのものよりも映画館の暗闇のほうが好きかもしれない。

【ミッション・インポッシブル/ローグ・ネイション】トム・クルーズ化するMIシリーズ【感想】

【KeyWord】トム・クルーズ、変態紳士的な笑顔、エンターテイメントの土壌、ほとんど完全なトム・クルーズ

f:id:uselesslessons:20151103021511j:plain

 「ミッション・インポッシブル」シリーズは回を追うごとに、なんだかトム・クルーズ化しているような気がする。僕が知る限り、トム・クルーズトム・クルーズであることを自覚的に押し出してきたのは、「ナイト&デイ」で、この映画は日本ではあまり売れなかったので、もしかすると日本人には意図が伝わりにくかったのかもしれない。でも安心してくださいトム。僕は分かっていました。

 「ナイト&デイ」でトム・クルーズが演じたのは言ってみれば変態紳士であり、銃弾が飛び交う中、「今日もドレスが似合っているよ」というリップサービスをかまして、敵をばこばこ殺していく姿は確かにそれなりに狂気ではあるが、それ以上にトム・クルーズのあのアホっぽい笑顔にこちらはやられてしまって、キャメロン・ディアスを拉致して紳士的に連れまわすのも「まあ、彼は変態紳士だからね、ありでしょう」と思ってしまう。問題です、「筋トレしながら、どうしてトムは笑っているのでしょう?」。トムの笑顔は、場面に関係なく繰り出され、繰り出された際には、有無を言わさぬ無駄な爽やかさで画面を支配する。

f:id:uselesslessons:20151103021535j:plain

 MIシリーズは、MI2で特にその傾向が強かったが、トム・クルーズの超人的な格闘術で最後は何とかしてしまうイメージがあったが、今回は意外なことに頭脳戦で敵を上回る。こんなことは、少なくともラストシーンでは初めてではないか。顔面の偏差値からするとどうしても敵の方が賢そうに見えてしまって(というのも、ただ一点、敵はにやにやしないので)、大丈夫なのかトム、いやいや、トムなら最後は徒手空拳で何とかしてくれるだろう、と思っていたら、なんと最後は、敵の慢心(とも言えないほどの慢心)につけこんで、見事に罠にはめるのである。これぞカタルシス! シリーズ5作目にして、本家の「スパイ大作戦」の遺伝子がようやく発現してきたかのようである。

 しかし、そのようにラストシーンが輝くのも、それもトムの変態紳士的な笑顔があってこそなのである。なんだろう、この無駄な爽やかさは。クールでもなく、もちろんホットでもない。今回もトムはよく笑っていた。いや、そう思えただけかな。そういえば、トムはあまり怒らないのである。起こった事態を即座に受け入れて、頑張って闘います、という感じ。今回だって感情をむき出しにしたのは、冒頭のシーンのみである。それ以外は、健気に頑張っている、時折あの笑顔を出しながら。トムの笑顔がエンターテイメントという土壌を作っている。どんなテーマであれ、トムの変態紳士的な笑顔を土壌にする映画は、全てエンターテイメントとなる。だって、そうでしょう。あの笑顔の前では、どんな悲劇もその悲劇性を失効させてしまう。MIはそういう意味で、5作目にして、ほとんど完全にトム・クルーズ化を完了させた気がする。嗚呼、くせになりそうだ。あの変態紳士的な笑顔がまた見たい。映画館で観たい。モナコ?」とにやりと笑うトム・クルーズを見て、「どうして貴方はそこで笑うのですか!」と笑いたい。トムが何を面白がっているのかわからないけれど、でも、トムが笑っていることが面白いんだ。僕は、トムが大好きなのである。

(監督;クリストファー・マッカリー 2015年 アメリカ)


映画『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』ティザー予告映像 - YouTube