僕は映画狂、というより、映画を語りたい今日

もしかすると、映画そのものよりも映画館の暗闇のほうが好きかもしれない。

ミッキーの中の人は、今どこで何をしているのか。

 ミッキーの中の人――存在する。

 ミッキーに中にオッサンが入っているなんて信じられない? それは違う。僕は確信している。ミッキーの中に入っているのは、間違いなくオッサンである。あれほど徹底できるのはオッサンしかいない。自分の外見情報発信アプリをアンインストール、代わりにミッキー・バージョンをインストール。そんなことができるのは、この社会では間違いなくオッサンだけである。

 ミッキーの中のオッサン、それをオッサンXと仮に呼ばせて頂く。

 僕は、ミッキーに遭遇した瞬間に愕然とする。あの着ぐるみが、オッサンXと僕を永遠に隔絶している。そんなことってあるか? 僕は他者のいったい何を見てきたのだろうか。たかが着ぐるみ一つで、オッサンXのことが何もわからないなんて、なんと鈍な鑑識眼だろうか。

 そしてふと気づく――いや、もしかすると誰もが誰もにとって、オッサンXなのかもしれない、と。着ぐるみをかぶっていない人たちとも、僕は永遠に隔絶されているのではないだろうか。

「ミッキーの中の人は、今なにをしているのか」

 僕は、オッサンXがミッキーに入り込む瞬間に、どのようにしてあんなに遠くへと消えてしまうのかが知りたい。オッサンXがミッキーに入っていく。オッサンXが完全にミッキーの中に入った瞬間に、ミッキーからは中の人が消え、ミッキーは中の人を持たぬミッキーになる。さようならオッサンX。こんにちはミッキー。あなたの中の人は、今どこで何をしていますか。