僕は映画狂、というより、映画を語りたい今日

もしかすると、映画そのものよりも映画館の暗闇のほうが好きかもしれない。

【怪盗グルーのミニオン危機一発】「ミニオンズを救ってくれ、怪盗グルー」とはじめてグルーを応援【感想】

※危機一「発」は誤字ではありません!

【KeyWord】コミカル・バナナ、モジャモジャ・ナスビ、全く悪くない怪盗、見た目が9割

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 ショックだ…。許せぬ。本作に登場するエル・マッチョなる悪党は、コミカル・バナナことミニオンズ(↑写真の黄色いのです)を利用して世界を支配しようとするのだが、その手段が、ミニオンズにある薬品を注入して怪物にかえてしまう、という許せぬ方法なのである。できあがるのは、コミカル・バナナではなく、モジャモジャ・ナスビのような怪物である。我らがミニオンズに何をしてくれるのだ。この劇的ビフォーアフターにはかなりショックを受けたが、青くなってもまだそれなりに可愛いのが悲しい。うっうっ。頼むから、あの頃のミニオンズに戻ってください…。あの可愛らしいバナナが好きだったのです。

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 そこに来ると、今まで一貫して興味がなかった怪盗グル―が一気に頼りがいがある男に見えるから不思議である。頼むぞ怪盗グル―、ミニオンズを救ってくれ。怪盗グル―は前作「月泥棒」では一端の悪党だったのだが、いまや完全に改心して実業家になって、ゼリーを作っている。今作で明らかになったことだが、どうやら悪党になった経緯も、言ってみれば「モテないオタク」としてつらい思いをしてきたから、その反動でグレてしまった、ということらしい。なんだこいつ、全く悪くないぞ。つまり構図としては、悪役のエル・マッチョはオタクとは逆の立場。実写の学園ものでは、よくアメフト部のモテモテ男子学生だったりする、あの立ち位置である。エル・マッチョがもくろむ世界征服を止めようとする怪盗グル―は、同時に全国の持てないオタクを代表して、アメフト男に怒りの鉄槌をくらわせているのだ。

 怪盗グル―が恋の予感に喜ぶシーンがいい。街中をダンスして回り、道行く人とハイタッチをする。モテない君として長らく過ごしてきたから、喜びもひとしおだろう。世界のすべてが喜びに満ち溢れてキラキラと輝いて見え、みんなの幸せを願いたくなる。怪盗グル―はもはや怪盗でもないし、悪党でもない。家庭では三人の女の子を育て、実業家として事業運営に苦労しながら、ささやかな恋に予感に歓喜するハゲ男。「生きて帰れないかもしれない、この際一つ聞くよ。もしデートに誘ったら何て答える?」なんていじらしいことも言う。なんだ、ただのいいやつじゃないか。ミニオンズは確か「その時代のいちばんの悪党」に仕えることになっていたはずだが、製作者ももうその辺りの設定はどうでもいいのだろう。同じくオタクとして生き続けてきたであろう相棒のネフェリオ博士も、「悪の軍団をつくるのは楽しいが、私の家族はまもりたい」とか何とか言って、結局はいちど別れた怪盗グル―を助ける側に回るのである。いいやつ揃いの味方。原題の「Despicable me」はもう中身を表すタイトルになっていない。でも頑張れ怪盗グル―。ミニオンズを救うために。

 本作は「トイストーリー3」を抜いてアニメ史上最高の興行収入を記録したらしい。ストーリーの完成度では、それまでのアニメとは別次元にまで行き着いていた(と思われた)「トイストーリー3」でさえ、ミニオンズの魅力のまえに屈したのだ、と見えてしまうのは、きっと僕がミニオンズを好きすぎるからだろう。しかし、なんだか考えさせられる比較ではある。結局、自分はミニオンズのように愛すべきキャラクターが生き生きと動き回っていたら、もうそれで満足なのである。観客側から言うと「好きになったもの勝ち」、製作者から言うと「好きにさせたもの勝ち」。もしもミニオンズの見かけが、はじめからモジャモジャ・ナスビだったなら、僕はそこまで好きになっていなかった。「見た目が9割」というのが、「映画に快楽を求める鑑賞態度」に留まる限りは事実である。

(監督: ピエール・コフィン、 クリス・ルノー アメリカ 2013年)

 「ミニオンズ」シリーズの感想はこちら↓。 ミニオンズが好きだ、ということをひたすら書いています。

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