僕は映画狂、というより、映画を語りたい今日

もしかすると、映画そのものよりも映画館の暗闇のほうが好きかもしれない。

【バディントン】「クマさん」であることの功徳【感想】

「クマさん」とは何なのだろうか、と映画「バディントン」を観ながら考えていた。「クマさん」と熊は違う。熊は自然界でシャケを掬っている猛獣で、「クマさん」とは想像上の生き物である。「クマさん」はシャケなんて魚臭いものは食べない。食べるのはハチ…

【オデッセイ】2億キロメートルの断絶、人とつながるということ【感想】

一言でいうと、火星版ロビンソン・クルーソーである。サバイバル劇を演じるのはマッド・デイモンで、彼は不慮の事故によって火星に取り残される。確かマッド・デイモンは映画『インターステラー』でも取り残されていた。よく取り残される男である。ここから…

【シン・ゴジラ】ゴジラさんが来たので、何かを壊して何かをはじめる。【感想】(劇場公開中)

もう僕は、シン・ゴジラになりたい。なってやりたい。現実ではなく虚構の方へ。弱者集合ではなく究極生物の方へ。嫉妬するほどのスペック。口からビーム、背中でビーム、シッポでビーム。僕はビールを今日もノーム。ヒールのフリして帰るホーム。 「このクニ…

【アノマリサ】愛が失われる瞬間を描いたストップモーション・アニメ【感想】

奇妙なストップモーション・アニメ。すべて人形を動かして1コマ1コマが撮影されている。そんな膨大な労力(撮影には2年間かかったらしい)を、くたびれた傲慢な中年の日常を描くのに使っている。ここですでに疑問ははじまっている。どうして彼らは人形で…

【ペット】とりあえず楽しみ、そして次に楽しむ。それだけの映画【感想】(劇場公開中)

取り立てて何てことはない映画なのだけれど、それだけにCGアニメの制作技術の進歩がよくわかる。これくらいのものなら力まずとも出せますよ、という感じ。時間も短く、ほどよくカタルシスもあり、もちろんユーモア方面も抑えている。かなり大雑把に言うと…

「人間は皆死ぬ」「で?」――「で?」の次に来るもの

明日死ぬかもしれない。その事実をどのように受け止めるのか。 中学生や高校生の頃、その事実に対して、深刻さを以て対峙する他なかった。死にたくない。でも死ぬんだ。何なのだろうか、この理不尽は…。 しかし、20代を人並みにやり過ごし、30歳を超えた今、…

100記事目の前に

次の記事で100記事目になるので、幾つか反省点を残しておきたい ①ブログを書くときの敵は、羞恥心、ただそれだけ。 普段の文章を書くスピードなら、2015年中くらいには100記事に軽く到達すると思っていたけれど、結果的にはここまで引っ張った。敵は羞恥心、…

無限を飛び越えるために、有限を掘ればいい。

泳げない我々を襲ったのは、どうしようもない欲望。すなわち海の向こうのあの島へ渡りたいという欲望でした。 「あの島に行ってみたいんだ」 誰に言うわけでもなく、我々は我々の欲望を確認するためだけに、何回もそう呟いたのでした。時には、本当にあの島…

あのピアノ対決の真相(『海の上のピアニスト』の感想③)

このサイトで、『海の上のピアニスト』における最大の見せ場であるピアノ対決の意味を解説してくれている。文脈上たぶんこういうことなのだろうということくらいは分かっても、引用部分のように言葉にしてくれていると詳細が分かって確信が持てるので有難い…

天才のことは知らないけれど、天才は意外に不便かもしれない(『海の上のピアニスト』の感想②)

感想①はこちら。uselesslessons.hatenablog.com 「海の上のピアニスト」について、このHPの感想が面白かった。本当、他の人の感想は面白い。 J/ 彼は、88個の鍵盤の上で、物語を奏でることによって、完結してしまっているんだね。ただ一度無垢な少女を見て…

生は悲しいことに有限だが、だからこそ創造的である(『海の上のピアニスト』の感想)

船で生まれ、天才ピアニストへと成長し、そして船と共に死んでいった1900(ナインティーンハンドレッド)。船を降りる機会はいくらでもあったはずの彼は、どうして最期まで船を降りなかったのか。この問いの先には、有限性と創造性の意外なつながりが見…

ベッキー騒動について。恥を知らぬ人々と自分について。

blogos.com 知らない間に(僕だけか)、ベッキーの不倫についてものすごい量の情報が行き来している。みんな、すごくヒマなのだ。そして僕も同じようにヒマなので、こんな文を書こうとしている。 よく論じられている論点については、あまり興味がない。いく…

3Dであることなんか、映画にとっては大したことじゃない、という話。

『アバター』では、どんな映画よりも涙を流した。目がものすごく痛い映画だった。3D映画を一気に標準化させたこの映画では、作り手の方も気合いが入りすぎて、3D効果の調整を誤ったのではないか。映画館の隣に眼科がいるのではないかと思ったのははじめて…

インドはいつでも想像の斜め上を行く。そんな映画。(映画『ロボット』の感想)

分かっている。分かっているのだ。インドはいつだって、我々の想像の斜め上を行く。 走るバイクの上で「人間ピラミッド」、インド共和国記念日のパレード India marks Republic Day with camels and stunt-riders 2分26秒以降のバイク上の「人間ピラミッド」…

白鯨と闘う前に気になる「あれ」

2016年の初映画は「白鯨との闘い」に決めていたにも関わらず、二の足を踏んでいる。ふとした瞬間に目に飛び込んでしまった事前情報に、恐れを抱いているのである。僕がいちばん苦手としている、あれ、があるらしい。 一応ネタバレになるので、閉じます(僕も…

バルタン、ごめん。

バルタン許してくれ。前の記事で、君を悪役の代表のように書いたが、その後ふと気になって調べたら、君たち一族が意外にも苦労人であることを知った。簡単に言うと、 ①マッド・サイエンティストのせいで故郷の星が消滅②宇宙旅行中の20億3000万人のバルタン星…

観客を置き去りにする転身ぶり(映画『フルスロットル』の感想)

題名には見覚えがないはずなのに、序盤でオチまでわかってしまって、自分スゲー、となっていたのだけれど、あの超人アクション映画『アルティメット』のリメイクだった。まあ、ほとんど忘れていたので存分に楽しめたけれど・・・。 無重力アクション、と銘打…

寒い朝の戦闘モード

天候こそ、人の性格を決めるんじゃないか、と思うことがある。いや、もっと正確に言うと、肌にあたる風の触感。あれこそが性格を決めるのではないか。 この時期、日の出直前の真っ暗な朝に出ると、街も家も何もかもいつもよりもずっと静かで、ただでさえ寒…

それ、僕のアイディアでしょ。

それ、僕のアイディアでしょ、と言いたくなることがある。実装では先を越されたが、考えたのは僕が先だった。すごいのは0から1を生み出した僕であり、すでにある1を集めて100にしたあの人ではない。 もちろん実態としては負け惜しみに過ぎない。単に先を…

映画を観る代わりに。

映画を観ることができない状況なので、映画を観ているのと同じような別のことをしたい。何だろうか。あの映画について書くことだろうか。 何も見えない暗闇の中、なんだかがさがさ動く音がする。続いて木を削るような音。カタカタカタというタイプ音。何かが…

自分で「ハッピーエンドかバッドエンドか」を選べる映画は、素晴らしい映画になり得るか。

自分で「ハッピーエンドかバッドエンドか」を選べる映画があるとしよう。それは自分にとって素晴らしい映画になり得るか? 選択肢が多ければハッピーなのかというと、実はそうでもない。人間は不思議なものだと思う。選択肢があることで選ぶ苦悩が生まれる…

『タイタニック』は恋愛映画ではない。

「大船に乗ったつもりでいて下さい!」「わかった」「まあ、タイタニックかもしれませんが」「おいっ」 みたいなベタな会話を続けて2回もしてしまったので、映画ブログをしている身としては、「タイタニック」について考えざるを得ない。 僕にとって、面白味…

早くも来年の抱負。映画を撮ります。

社会人映画サークルに入ろうかと思って、例によってGOOGLE先生に聞いてみたのだけれど、思っていたのと違っていたので、しばらくは見合わせることにする。 社会人だからもっとミーハーなファンが集まっていると思ったら(どうしてそんなことを思ったのだろう…

スターウォーズキャラ 「100m走スピード対決!」「体調不良で心配です」勝手にランキング

【100m走スピード対決!】 ◆1位:デストロイヤー・ドロイド・・・堂々の1位ランクイン。移動の手段は「転がる」。そう、あのドロイドです。コロコロ転がっては前にシールドを張って邪魔をしてきたちょっと怖い奴。 ◆2位:チューバッカ・・・参考デー…

スターウォーズ祭り、そろそろ終了(まだ終わりませんけど)

そろそろ当ブログで1か月ほど続けてきた「スターウォーズ祭り」も終焉だ。 スターウォーズの新作に対する批判もかなり表に出てきている。当初、大手メディアやネットも含めて絶賛の嵐だったのが、ものの2、3週間でこれほど変わるとは、映画批評なんて当て…

すこんと意味が抜けたとき、ひょっこり無意味が顔を出す(『風立ちぬ』『マトリックス』)

太宰治に「トカトントン」という短編がある。戦争を体験した男が作家に手紙を出している。彼は悩んでいるのだ。恋をしたり、心が動かされたり、何かに情熱を抱いたりしても、どこからか「トカトントン」という音が聞こえてきて、急に何もかも白けてしまう。…

ルーカスの批判、そしてエピソード8に期待すること。

ルーカスの発言。 「私はSWを単なるSF映画だとは思っていない。SWはメロドラマであり、すべての家族の問題を描いているんだ。ところがディズニーは(SWを)メロドラマではなく、ファンを喜ばせるためのレトロ(懐古趣味)なSF作品にしようとしてい…

ミッキーの中の人は、今どこで何をしているのか。

ミッキーの中の人――存在する。 ミッキーに中にオッサンが入っているなんて信じられない? それは違う。僕は確信している。ミッキーの中に入っているのは、間違いなくオッサンである。あれほど徹底できるのはオッサンしかいない。自分の外見情報発信アプリを…

カオナシの中にいた人は、今どこで何をしているのか(『千と千尋の神隠し』)

カオナシの中――ぞっとする。 カオナシは、現代人の孤独の象徴とか、人間の欲望そのものを表現したものだとか言われる。あれほど総合的な映画なのだ。様々な解釈が可能だろう。凶暴な外見とは裏腹に、絞り出すような声で「サ、サビシイ…」と漏らす声は、彼が…

映画ファンを代表する資格はないけれど、映画ファンについて。

前の記事で「映画を観ていない間、映画ファンは何をしているのか」ということを書いたのだけれど、この問いに対して、実に明快な答えを持っている人もいる。その答えとは、「別の映画を観ている」だ。 GOOGLE先生に聞いたところによると、中には1年で50…